【失敗談】訪問診療の効率化でスタッフが辞めた。それでも実績60%アップできた理由

歯科訪問診療

訪問歯科の効率化で、私が経験した一番の地獄をお話しします。

これは、うまくいった話ではありません。少なくとも最初は。訪問歯科の「効率化」を推し進めた私は、長年一緒に働いてきたスタッフを大量に失いました。その経験は、今でも苦く、重く、胸に残っています。

しかし、その痛みを乗り越えた先に、月間実績60%以上アップという結果が待っていました。だからこそ私は、これから訪問歯科を始める同業者の皆さんに、この経験を正直にお伝えしたいと思っています。

失敗と成功、両方の話を、包み隠さず。

「ゆるいアポ」に慣れたチームへの効率化——そのとき現場で何が起きたか

当院が訪問歯科を本格化した当初、スケジュールはかなりゆったりしたものでした。患者さんと丁寧に向き合える余裕があり、スタッフも「これが当院の訪問診療のペース」として自然に受け入れていました。

問題が起きたのは、そこに「効率化」という言葉を持ち込んだときです。移動時間を圧縮し、1日あたりのアポ数を増やす。経営的には正しい判断でした。しかし現場のスタッフにとっては、突然「あなたたちはもっとやれる」と言われたに等しかった。

抵抗は激しかった。そして、数名のベテランスタッフが辞めていきました。

誤解しないでほしいのですが、彼らは怠けていたわけではありません。むしろ、誠実に患者さんと向き合い、当院の文化を支えてきてくれた人たちでした。問題は「文化を途中から変えること」の難しさを、私が甘く見ていたことにありました。

長年かけて醸成された「ペース感」は、スタッフにとっての信頼であり、誇りでもあります。それをデータや論理だけで変えようとしたとき、現場には不信感が走る。私はその事実を、痛みとともに学びました。

それでも諦めなかった——痛みの先にあった「実績60%アップ」

離職という現実に直面した私は、一度立ち止まって考えました。「効率化の方向性は間違っていない。ただ、やり方が間違っていた」と。

そこから始めたのは、スタッフへの丁寧な対話です。チームに向けて、私は次の3つを徹底的に伝えることにしました。

① 「怠けているから変えるわけではない」という大前提の共有

まず最初に伝えたのは、これまでの働き方を否定するものでは絶対にない、ということです。「皆さんが当院の訪問診療を誠実に支えてくれていることは、私が一番わかっている」——この言葉を、何度も、自分の口で伝えました。信頼関係の再構築は、ここからしか始まりません。

② 削るのは「移動時間」と「無駄な待機」であって、「ケアの質」ではない

次に伝えたのは、効率化のロジックです。「アポ数が増えても、患者さん一人ひとりへのケアの時間は落とさない。削るのは施設間の移動時間と、Dr・スタッフが現場でただ待っている無駄な時間だ」と。

これは言葉だけでなく、実際にシステムで示す必要がありました。スケジュールをツールで自動計算し、移動時間・待機時間が視覚化されると、スタッフは初めて「なるほど、ここが無駄なのか」と腹落ちしてくれました。感覚ではなく、データで見えることの力は大きかった。

③ 現場を支えてくれていることへの、最大限の感謝

そして最後に、これが一番大切だったかもしれません。「ありがとう」を、きちんと言葉にすること。変化を求める前に、感謝を伝える。経営者として当たり前のことですが、日々の業務に追われるとつい後回しになってしまう。その反省も含めて、伝え続けました。

この3つの対話を重ねながら、システムと仕組みの整備を着実に進めた結果——当院の訪問診療の月間実績は、60%以上アップしました。スタッフの疲弊感も増えるどころか、「段取りが明確になって動きやすくなった」という声が上がるようになりました。痛みを伴ってでも、正しい仕組みを入れることには、絶対に意味があります。

これから始める方へ——「最初の仕組み」がすべてを決める

私が経験した苦労を振り返ったとき、一つの明確な結論に辿り着きます。

訪問歯科は、最初から正しいペースで始めることが最善の戦略です。

最初に「ゆるいアポ」で始めてしまうと、それがチームの「標準」になります。後からそれを変えようとすると、私が経験したように、大きな摩擦と痛みが生まれます。

逆に、最初から「当院の訪問診療はこのペースで行うものだ」とスタッフに理解してもらえれば、それが自然な文化として根付きます。変化への抵抗は起きません。

スタートアップの段階で、移動時間を最小化した無理のないスケジュールを組む仕組みを整える。それだけで、後の苦労の大半を回避できます。

この経験が、スグデルタイムPro開発の原点

あの大量離職の経験がなければ、私はスグデルタイムProを作っていなかったと思います。

「なぜ、こんなに苦労しなければならないのか」——その問いが、開発のきっかけでした。移動時間を自動で計算し、DrとスタッフのタイムラインをA4一枚に出力するだけで、無駄のない・矛盾のないスケジュールが完成する。そういうツールがあれば、最初から正しい仕組みでスタートできる。苦い経験を積んだ者だからこそ、作れたツールだと思っています。

これから訪問歯科を始める方に、私と同じ苦労をしてほしくない。既存の体制を変えようとしている方には、変化の先にある大きな成果を信じてほしい。

その想いを込めて、このツールを作り続けています。

この記事のまとめ

  • 「ゆるいアポ」に慣れたチームへの後からの効率化は、大きな摩擦と離職を招く危険がある
  • 既存体制を変えるなら「感謝・ロジック・削るのは移動時間」の3点を丁寧に伝えることが不可欠
  • 正しい仕組みを入れ切った先には、月間実績60%アップという大きな成果が待っている
  • これから始めるなら、最初から効率的な仕組みを導入するのが最善の戦略

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